NHKとCCTV共同制作の大型番組「シルクロード」が放送されたのは1980~81年。当時の中国は「神秘のベール」に包まれており、大人気を博した。喜多郎のテーマ音楽と石坂浩二の語りも評判をよび、1988年には「奈良シルクロード博」が開催され700万人近くが参観するなどシルクロードブームは続いた。今年7~8月NHKは「シルクロード」を再放送。コロナ禍で新番組制作が難しいからではと思われる。40年前の荒廃したキジル千仏洞も放送された。視聴された方もおられよう。

 

1986年新疆ウイグル自治区クチヤ西方約70kmのキジル千仏洞を訪れた感動は忘れられない。ラピスラズリの青で描かれた釈尊の前世物語に圧倒された。日が暮れて道に迷う旅人に自らの手を燃やす釈尊、飢えた虎の親子にわが身を差し出す釈尊…。300ほどの石窟に、1万㎡もの膨大な壁画が残存。風雪にたえ異宗教にたえ盗掘にたえ、千数百年。なお色鮮やかに残る人々の願い。中国四大石窟の中では最も西に位置するため仏教発祥の地インドの影響を色濃く残している。

 

修復前後のキジル千仏洞(部分)

修復前後のキジル千仏洞(部分)

 

「人類共通の文化遺産」と直感し、保存にと個人寄付。1987年「日中友好キジル千仏洞修復保存協力会」を設立。「人類共通の文化遺産を後世へ」をスローガンに募金を開始するも敦煌と違って殆どの方がキジル千仏洞をご存知なく募金は難渋。諸氏の尽力で1988・89年と二次にわたり3,000をこえる個人や企業からの浄財1億円余を新疆政府に寄贈することができた。本格的工事を開始し、千仏洞は輝きを取り戻した。その後も世界的文化遺産保護の重要性を理解いただくため参観団を度々派遣。また職員通勤用バスや飲料水浄化装置贈呈なども行ってきた。

 

世界で唯一正倉院に残る「五弦琵琶」が描かれたキジル第8窟

世界で唯一正倉院に残る「五弦琵琶」が描かれたキジル第8窟

 

2014年6月22日、第38回世界遺産会議で「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」の構成資産としてキジル千仏洞は世界文化遺産となった。PC生中継を見続けていた筆者と妻は「万歳!」と叫んだ。修復保存協力を開始して28年後のことであった。

 

キジル千仏洞はシルクロードに咲いた仏教芸術の名花であり、日本人の外国遺跡修復保存協力が世界遺産へ結びついた稀有の例。「修復寄贈」記念碑には寄付者全員の芳名が刻まれている。阿弥陀経や法華経などを訳出した鳩摩羅什三蔵像も建立した。コロナ禍が明けたら、ぜひご参観!日本を発って翌日夕刻には到着、小ホテルも完備している。爽やかな空気の中、食事は一段と美味で~す。

 

感謝報告1私がキジル千仏洞などの部分を仲介し出演もしたNHK「シルクロード・壁画の道をゆく」も9月再放送された。初放送は2017年、3年経って再放送されるのは好評の証、ありがたいことです。感謝報告2「ほんかわ」94で紹介した拙稿「水谷幸正先生とニヤ遺跡学術研究機構」は、このADC文化通信で全文を掲載中ですが、友人が「せっかくだから」と小冊子にしてくれました。これまたありがたいことです。

騒音もありがとう

手を伸ばせば届くほど上空を大型機が降下してくるようになったのは数ヵ月前。コロナ禍による減便も少しずつ復便し、次々と轟音。品川・天王洲アイル上空約300m、寓居上空約200m。

 

小僧楽書:背景は夕焼けと着陸寸前機(以上4点撮影:筆者)

小僧楽書:背景は夕焼けと着陸寸前機(以上4点撮影:筆者)

 

苦情が多々寄せられるほどの騒音。訪日外国人急増へ対応するため羽田便増加策の一環で開始された新宿・渋谷・品川…都心上空着陸ルート。コロナ禍で訪日外国人急増は先送りだから、新ルートも先送りしたらとの意見も。街ゆく人が見上げるほどの轟音。でもでも騒音もありがとう、と小僧は「イヤだけど」受け入れます。世の中、「文句・批判」でメシを食っている人たちが各分野におられます。それはそれで結構ですが、小僧は「イヤなこと」も受け入れます。ほんわかほんわか。