仁徳天皇陵古墳など「百舌鳥・古市古墳群」が6月末から7月10日までカスピ海に面したアゼルバイジャン・バクーで開催のユネスコ第43回世界遺産委員会で、国際記念物遺跡会議(イコモス)の「登録勧告」どおりに登録される可能性大です。

 

わざわざ「可能性大」としたのは最近の世界遺産委員会ではイコモスの「勧告」を覆す決定がされているからです。「勧告」は登録・情報照会・登録延期・不登録と4段階ありますが、昨年は登録が推薦国の意向もあり情報照会になったり、不登録から登録される決定も。また古墳群が所在する堺市の発表によるとイコモスの現地調査は昨年9月にフィリピン人専門家により実施されましたが、その氏名は「本人の希望により非公開」となっています。世界遺産登録に反対する人たちがいるためのようです。

 

これらの状況が菅官房長官の「勧告通り本年夏、登録されるよう、政府として油断することなく全力で取り組んでいきたい」の「油断することなく全力で」に表れていると思います。

 

資料:キジル千仏洞が世界遺産となった第38回世界遺産委員会PC生中継より

 

登録されれば日本で23件目の世界遺産となります。内19件が文化遺産、4件が自然遺産。「百舌鳥・古市古墳群」の構成資産は49基の古墳。その内の「百舌鳥古墳群」の4古墳を参観してきました。もちろん内部には立ち入れませんので、外部からの撮影です。古墳時代最盛期の4世紀後半から5世紀後半に築造されました。

 

49基中の29基を天皇や皇族の墓「陵墓」として宮内庁が管理しています。専門家も立ち入れず、被葬者が誰であるかは学術的には証明されていません。そのためもあり新聞などでは「仁徳天皇陵」と鍵括弧つきで報じられています。日本には前方後円墳約4000基ふくめて約16万基もの古墳があるそうです。

 

仁徳天皇陵古墳(大山(だいせん)古墳):エジプトのクフ王ピラミッド、中国の始皇帝陵とならぶ世界三大墳墓。宮内庁により「陵墓」に指定されています。墳丘長約486mの日本最大の前方後円墳で、墳丘は3段で高さ約35m、三重の濠がめぐらされ、約3㎞の周遊路が整備されています。当時は朝鮮半島と緊張状態にあり、力を見せつけるために大阪湾からも眺められるように巨大古墳を造ったのではとも言われています。

「資産近傍」(世界遺産申請での遺跡保護のための周辺「緩衝地帯」内でも遺産に隣接した地域)は民家が主ですが、カフェなども。なんとラブホも、申請以前からでしょうが、規制緩やかな日本らしいですね。鉄柵越しにのぞき込んだり撮影したりで一周約1時間。

下の説明パネルのように周囲には多くの小型古墳・陪塚(ばいちょう)があります。その内の大安寺山古墳など11古墳も世界遺産の候補です。地名に基づく名称は「大山古墳」ですが、文化庁の世界遺産推薦書では「仁徳天皇陵としてまつられている古墳」とされました。

 

仁徳天皇陵古墳拝所には多くの方が

 

左:仁徳天皇陵古墳と周辺古墳を示す説明パネルより  右:天皇陵の向いにラブホ

 

御廟山古墳:仁徳天皇陵古墳の南南東に所在、JR陸橋を渡った先です。宮内庁により「百舌鳥陵墓参考地」(被葬候補者は第15代応神天皇)とされています。墳丘長約203mの前方後円墳で、墳丘は3段、濠は一重のみ残存。一部は周遊路がありますが、3分の1ほどは濠に面して民家が連なり、迂回が必要です。イコモスは「勧告」で本古墳について「国レベルの保護措置」を求めています。なお「古市古墳群」には類似名の誉田御廟山古墳があります。

 

御廟山古墳

 

いたすけ古墳:御廟山古墳の西南西に所在。墳丘長約146mの前方後円墳で、墳丘は3段、濠は一重のみ。陪塚・善右ヱ門山古墳も世界遺産の候補です。民有地であった1955年頃に土砂採掘と住宅地造成のため破壊されそうになるも住民運動により、堺市が買い取り保存されたそうです。翌年に国指定史跡となりました。「古墳は文化財」との意識が生まれるきっかけとなったようです。

樹木伐採は中止されたものの古墳の半分ほどはハゲ山に。土砂採掘と住宅地造成のため重機用の橋が架けられ、現在もその一部が残存。文化財を破壊する愚かさを示すためにあえて残したとも言われています。橋のことはイコモスの「勧告」では触れられていません。名称の由来はWebでもヒットしませんでした。

 

いたすけ古墳には橋の残骸が

 

履中天皇陵古墳(上石津ミサンザイ古墳):いたすけ古墳の西、仁徳天皇陵古墳の西南に所在。いたすけ古墳からJRを渡って間もなくです。宮内庁により「陵墓」に指定されています。墳丘長約365 m 、日本で3番目に大きい前方後円墳、墳丘は3段で高さ約27m、一重の濠に囲まれています。陪塚の寺山南山古墳と七観音古墳も世界遺産の候補です。二重目の周壕の一部が1994年に発見されたそうです。世界遺産となる機会に是非とも二重目周壕の本格的発掘調査をして欲しいですね。難しいのは百も承知ですが…。

 

履中天皇陵古墳拝所には民家が迫り

 

世界遺産となったキジル千仏洞、そしてニヤ遺跡の保存体験をつうじて、文化遺産保存の各種困難は十分承知していますが、沙漠や山間部でなく住宅街での保存は別の難しさがあると感じました。JR阪和線の三国ヶ丘駅下車、各古墳をそれぞれ一周して徒歩計約4時間、真夏並みで汗ダクダク、帰りは上野芝駅乗車。世界遺産に登録されることは保存には良いことですが、観光客が押し寄せて付近の方には迷惑なこともあるでしょうね。

 

私が訪れた5月24日、吉村大阪府知事が仁徳天皇陵などを視察し拝所前で報道各社のインタビューを受けていました。

 

取材を受ける吉村知事(中央奥)

 

「古墳の形を自らの目で見られるような仕組みが必要と思いました。上空から全体像を見ることで、歴史的価値や感動を感じてもらえる。ヘリは難しいが、タワーの建設や、気球を飛ばす案などを前向きに検討する。府と堺市が協力し、早急に具体案を掘り下げていきたい」と答えていました。上に掲載した写真のように外周からでは実感がわきませんから是非とも実現して欲しいですね。世界遺産となれば大阪初!下の写真のように見られたら最高ですね。

 

古墳周辺設置の説明パネルより(以上9点撮影:筆者)

 

オマケの話:タクラマカン沙漠で文化財保護研究に取り組んできた私を「人民日報」系の「環球時報」英語版が“Japanese monk find ‘second home’ in China’s Xinjiang”と一頁特集、美しい世界遺産キジル千仏洞のカラー写真いりで。ありがたいことです。Webでも上記で報じられています。ちなみに一面は米中貿易戦争でファーウェイ記事と涙をにじませ辞任表明する英メイ首相の大きな写真。世界は厳しいですね。また「環球時報」中国語版は「小島康誉:我150多次到訪新疆」と題して私の文化財保護や人材育成などを報道。「こんな日本人もいるのか」と中国人読者が思えば、相互理解につながりますね。

 

HOPE & LOVE

キャンベル・ラ・プンさんは人気上昇中のステンシル・アーティスト。作品制作中の彼を訪ねた際の楽書です。生きていくには「希望」と「愛」が必須ですね。

 

小僧楽書:背景はCampbell La Pun氏の作品(撮影:筆者)

 

日本で世界で次々と起きる事故や事件。差別・対立・紛争・戦争。苦しみを受け入れて、悲しみに泣いて、怒りを抑えて……日々生きているワタシ達。楽しみを探し、喜びを見つけ、助けあい……日々生きているワタシ達。希望と愛がワタシ達の宝。愛はもちろん恋愛だけでなく、「広い愛、大きな愛」です。「慈愛」とも言えますね。嗚呼ほんわかほんわか。

 

Campbell La Punさんの作品も希望と愛が溢れています。モンローにヘップバーン、武士にポパイ、ドラエもんにキティちゃん……。彼の作品が各国で評価されるのは、希望と愛を独自表現しているからでは? ほんわかほんわか。