新型コロナウイルスの感染拡大防止の緊急事態宣言が解除され、美術・博物館が次々と開館している。この間、多くの展覧会が会期途中の閉幕や開催中止になったのは、真に残念というほかない。まだまだ制約が伴っているが、外出自粛の日々からやっと開放だ。美術に限らず音楽、スポーツを含め文化活動は、私たちの生活に潤いを与えていたことを痛切に感じた。今回は陶芸とデザインをテーマとした展覧会を取り上げる。大阪市立東洋陶磁美術館は、特別展「天目―中国黒釉の美」を11月8日まで、京都国立近代美術館では「チェコ・デザイン 100年の旅」を7月5日まで開いている。いずれも会期を延長しての開催で、絵画に偏っている展覧会から脱し、陶芸やデザインの魅力をじっくり味わうことができる。なおコロナ感染症の感染拡大予防のための対策は、それぞれのウェブサイトにて案内している。

大阪市立東洋陶磁美術館の特別展「天目―中国黒釉の美」
唯一国宝に指定の《油滴天目》に注目
「現代の天目―伝統と創造」も同時開催

天目とは、黒釉がかけられた陶器製の茶碗のことだ。なかでも曜変天目と油滴天目は、中国宋時代に建窯で焼かれた黒釉茶碗の最高峰とされる。今回の展覧会は、日本伝世の油滴天目で唯一国宝に指定されている《油滴天目》をはじめ、大阪市立東洋陶磁美術館が所蔵する黒釉陶磁に加え個人所蔵の作品にスポットをあてられている。唐時代から宋・金時代の黒釉陶磁24点により、中国黒釉の世界とその美に迫っている。「現代の天目―伝統と創造」も同時開催されていて、近現代の作家による天目作品を通して、天目の多彩な表現を鑑賞できる。

 

天目茶碗の由来は興味深い。いくつかの文献から引用すれば、中国の南宋時代(12-13世紀)に、浙江省天目山の禅院で使用され、建盞(けんさん)と呼ばれていた。鎌倉時代に中国の天目山にある禅刹へ日本から多くの僧が留学し、帰国に際して寺で使われていた茶碗を日本に持ち帰り、天目山の茶碗ということで天目茶碗と呼びならわしたそうだ。天目にはいくつかの種類があり、昨年話題になったのが、《曜変天目》だ。

 

漆黒の釉色の中に大小の銀色の斑点が連なり、その周囲を暈(かさ)状に神秘的な瑠璃色の光彩を放つ名品は格別だ。日本では希少で貴重な茶碗として伝世した。もともと「窯変」なのだが、「曜」は日・月と火・水・木・金・土の五星を指し、世にも稀なる美しさを表現したようだ。

 

当サイト(2019年4月1日号)に「世界に三碗、国宝の《曜変天目》が三館で同時期展示」で、取り上げた。静嘉堂文庫美術館(東京)はじめ、藤田美術館(大阪)所蔵品を奈良国立博物館で、大徳寺龍光院(京都)所蔵品をMIHO MUSEUM(滋賀)に足を運んで鑑賞した記憶は新しい。とりわけ静嘉堂文庫美術館では、外光の入る空間に展示され感激した。

 

さて今回は、様々な天目茶碗と黒釉陶磁が並ぶ。プレスリリースや図録の作品解説を参考に、主な出品作品を画像とともに掲載する。なかでも唯一国宝の《油滴天目》(南宋時代・12~13世紀/建窯、住友グループ寄贈/安宅コレクション)に注目だ。展示品には写真家の西川茂氏の高精細な画像が添えられている。また《油滴天目》は、免震装置付きの回転台に展示し、踏み台が置かれ、角度を変え、より高い位置から見ることが出来る。

 

国宝《油滴天目》(南宋時代・12~13世紀/建窯、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂 国宝《油滴天目》(見込)撮影:西川茂

左)国宝《油滴天目》(南宋時代・12~13世紀/建窯、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂
右)国宝《油滴天目》(見込)撮影:西川茂

 

《油滴天目》は、釉薬の表面に生じた油の滴のような斑文がその名の由来。茶碗の内外の黒釉にびっしりと生じた銀色の斑文には、青色や金色などに輝く光彩(虹彩)が加わり幻想的な美しさを見せている。高さ7.5センチ、重さは349グラムで、手に持つと安定感のある心地よい重みが伝わるという。この作品は関白・豊臣秀次(1568~95)が所持し、のち西本願寺、京都三井家、若狭酒井家に伝来した最高傑作だ。

 

国宝《油滴天目》は免震装置付き回転台に展示

国宝《油滴天目》は免震装置付き回転台に展示

 

重要文化財の《木葉天目》(南宋時代・12~13世紀/吉州窯、住友グループ寄贈/安宅コレクション)もすばらしい。吉州窯(きっしゅうよう)の天目は、胎土が比較的白く、薄づくりで高台が小さく低いのが特徴だ。器壁が直線的に大きく開いた平碗で、見込みには本物の木葉が焼き付けられていることから、「木葉天目」と呼ばれている。さらに、見込みの一部には金彩の梅花文の痕跡も確認できる。加賀藩主前田家に伝来したもので、こちらも木葉天目の最高傑作として名高い。

 

左)重要文化財《木葉天目》(南宋時代・12~13世紀/吉州窯、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂   右)重要文化財《木葉天目》(見込)撮影:西川茂

左)重要文化財《木葉天目》(南宋時代・12~13世紀/吉州窯、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂
右)重要文化財《木葉天目》(見込)撮影:西川茂

 

また《白覆輪(しろふくりん)天目》も個人蔵を含め5点出品されている。これは茶碗に黒釉をかけてから、口縁部の釉薬を削り取り、白化粧を施してから透明釉薬かける手の込んだ茶碗だ。さらに美しい虹色のグラデーションを見せる光彩の生じた《禾目(のぎめ)天目》が3点、べっ甲に似た釉調の(玳皮(たいひ)天目》2点も並ぶ。

 

《白覆輪天目》(金時代・12~13世紀/磁州窯系、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂

《白覆輪天目》(金時代・12~13世紀/磁州窯系、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂

左)《禾目天目》(南宋時代・12~13世紀/建窯、個人蔵)撮影:西川茂 右)《禾目天目》(南宋時代・12~13世紀/建窯、個人蔵)撮影:西川茂

左)《禾目天目》(南宋時代・12~13世紀/建窯、個人蔵)撮影:西川茂
右)《禾目天目》(南宋時代・12~13世紀/建窯、個人蔵)撮影:西川茂

左)《玳皮天目》(南宋時代・12~13世紀/吉州窯、住友グループ寄贈/安宅コレクショ ン)撮影:西川茂 右)《玳皮天目》(南宋時代・12~13世紀、個人蔵)撮影:西川茂

左)《玳皮天目》(南宋時代・12~13世紀/吉州窯、住友グループ寄贈/安宅コレクショ ン)撮影:西川茂
右)《玳皮天目》(南宋時代・12~13世紀、個人蔵)撮影:西川茂

 

黒釉陶磁にも優品が目白押しだ。《黒釉白斑壺》(唐時代・8~9世紀、住友グループ寄贈/安宅コレクション)は、壺の内外に黒釉がかけられ、白斑がダイナミックに施されていて、白斑の一部は青白く発色している。《黒釉堆線文水注》(金時代・12~13世紀/磁州窯系、住友グループ寄贈/安宅コレクション)は、肩から裾にかけて繊細な白堆線がストライプ状に施されている。白堆線1本1本に、神経の行き届いた緊張感のある表現がうかがえる。

 

左)《黒釉白斑壺》(唐時代・8~9世紀、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂 右)《黒釉堆線文水注》(金時代・12~13世紀/磁州窯系、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂

左)《黒釉白斑壺》(唐時代・8~9世紀、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂
右)《黒釉堆線文水注》(金時代・12~13世紀/磁州窯系、住友グループ寄贈/安宅コレクション)撮影:西川茂

 

このほか《黒釉白地掻落牡丹文梅瓶》(北宋~金時代・12世紀/磁州窯系、住友グループ寄贈/安宅コレクション)は、白化粧した後、黒釉をかけ、文様の周囲を掻き落として白地とし黒の文様を際立たせている。画像紹介の作品は一部で、会場で実物を見てほしい。

 

《黒釉白地掻落牡丹文梅瓶》(北宋~金時代・12世紀/磁州窯系、住友グループ寄贈 /安宅コレクション)撮影:西川茂

《黒釉白地掻落牡丹文梅瓶》(北宋~金時代・12世紀/磁州窯系、住友グループ寄贈 /安宅コレクション)撮影:西川茂

 

会場の別室には、「現代の天目―伝塔と創造」の特集展も開かれている。板谷波山ら国内外の作家たちが、曜変天目の復元に取り組み、天目に触発され様々なアプローチを重ねた多種多様な天目作品約30点が出品されている。こちらも見ごたえがある。

 

板谷波山《天目茶盌》(1926~44年頃、大阪市立東洋陶磁美術館蔵/木村貞政氏寄贈)

板谷波山《天目茶盌》(1926~44年頃、大阪市立東洋陶磁美術館蔵/木村貞政氏寄贈)

 

とりわけジャン・ジレル氏は、フランスで唯一の陶芸の人間国宝(メートル・ダールMaitre d’Art)に認定されている。初公開の《IRIDESCENT TENMOKU》、すなわち「虹色(玉虫色)の天目」と名づけられた出品作は、茶碗の内外に黒釉上に禾目状の斑文が表れ、さらに全体に青や紫などの美しい光彩のグラデーションが生じている。若い頃、中国宋時代のやきものに魅せられ、40年以上にわたり独自の天目を探求し、東洋の伝統と西洋の技術・感性が融和した新たな天目を生み出している。

 

ジャン・ジレル《IRIDESCENT TENMOKU》、大阪市立東洋陶磁美術館蔵/ Ngiam Thong Kin氏寄贈)

ジャン・ジレル《IRIDESCENT TENMOKU》、大阪市立東洋陶磁美術館蔵/ Ngiam Thong Kin氏寄贈)

 

特別展「天目―中国黒釉の美」の公式図録『天目―中国黒釉の美』(中央公論美術出版、2020年、税込5,500円)にも触れておきたい。写真家の西川茂氏が大阪市立東洋陶磁美術館所蔵品に個人所蔵品を加えた24点の撮り下ろし画像を収録。画期的な高精細、広波長域撮影の写真によって、天目の色と質感をよりリアルに再現し、天目の多様な色合いや手触り感まで味わえる新たな鑑賞体験を可能にしている。

 

展覧会を企画した小林仁・学芸課長代理は、「新型コロナウイルスの流行により美術館のあり方も大きく変わりつつありますが、変わらないのはコレクションの価値といえます。美術館コレクションの価値は今後ますます大きくなるものと信じています。 本展は国宝《油滴天目》をはじめ当館の主要コレクションを最大限活用したものです。これまでの研究成果も反映し、従来のコレクションに新たな光を与えることを目的としています」と、強調している。

京都国立近代美術館の「チェコ・デザイン 100年の旅」
ミュシャから各時代の椅子・おもちゃ・アニメまで
約250点で辿る20世紀チェコのデザイン

チェコと言えば、芸術家アルフォンス・ミュシャ(ムハ)が生まれたことは知られているが、デザインの国であるのをご存知だろうか。20世紀のチェコは、ミュシャが活躍し、フランス絵画から影響を受けたチェコ・キュビスムと呼ばれる独自の様式を生み出し、工芸品や工業製品のみならず、アニメやおもちゃに至るまで、世界を魅了する数々のデザインを生み出している。今回の展覧会は、チェコ・デザインの100年を、家具やプロダクト、ポスターなど、チェコ国立プラハ工芸美術館所蔵の作品を中心とした約250点の作品によりたどっている。

 

20世紀のチェコは、2度の世界大戦を経て、その1世紀を振り返れば、戦争や占領そして政変といった刻々と変わる国家の情勢にデザイナーたちが翻弄された世紀でもあった。しかしヨーロッパの中心に位置し、次々と芸術運動が展開した。チェコ・キュビスムは建築やインテリアまで波及した。また天然資源に恵まれ、高い技術を誇るボヘミアン・グラスをはじめとする産業が発達し、その伝統が現代まで受け継がれている。2015年夏、神戸市立博物館で見た「プラハ国立美術工芸博物館所蔵 耀きの静と動 ボヘミアン・グラス」を思い出した。

 

大きな手で示す合板と木枠ネットの会場入り口

大きな手で示す合板と木枠ネットの会場入り口

会場は、デザイン展にふさわしく、グラフィックデザイナーの西村祐一さんと、京都国立近代美術館のキュレーター 本橋仁さんが展示デザインを施している。まず入り口のディスプレイに驚かされる。会場に足を進めると、展示品が日用使われているものが多く、キャプションを作品の近くに置いていない。花瓶や食器などの立体物を並べたガラスケースは鑑賞者との間に、額縁のように木のフレームを挟んでいるなどの工夫を凝らしている。

 

展示は、歴史に沿って、「1900年:アール・ヌーヴォー 生命力と自然のかたち」「1910年‐14年:チェコ・キュビスム 幾何学的形態からキュビスムへ」「1920年代:アール・デコの時代」「1930年代:シンプルなかたちと機能性」「1940年代:有機的フォルムと天然素材」「1950‐60年代:日常生活と応用美術の解放」「1970‐80年代:生活水準の見直しからポストモダンへ」「1990年代から現代まで:自由化と機能の再発見」の8章と、テーマ展示の「チェコのおもちゃと子どものためのアート」「チェコ・アニメーション」を加え10章で構成されている。

 

主な章と展示品を取り上げる。章扉を飾るのは、それぞれの時代の椅子。第1章の「1900年:アール・ヌーヴォー」には、ヤン・コチェラの《肘掛椅子(国民劇場支配人室用)》(1902年)が置かれている。もちろん人気を博したミュシャのリトグラフ《ジスモンダ》(1894年)など一連の作品が並ぶ。

 

ヤン・コチェラ《肘掛椅子(国民劇場支配人室用)》(1902年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

ヤン・コチェラ《肘掛椅子(国民劇場支配人室用)》(1902年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

 

アルフォンス・ミュシャ《ジスモンダ》(1894年、左端)と《藝術》シリーズの作品(1898年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

アルフォンス・ミュシャ《ジスモンダ》(1894年、左端)と《藝術》シリーズの作品(1898年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

 

次の章の「1910年‐14年:チェコ・キュビスム」では、パヴェル・ヤナークの《クリスタル(結晶)型小物入れ》(1911年)のように、幾何学的形態への単純化した作品が生まれる。そして「1920年代:アール・デコの時代」には、ヨゼフ・アイゼルトの《蓋付ガラス》(1923年)のような幾何学的なデザインで装飾された表現があらゆる工芸品に普及する。

 

左)パヴェル・ヤナーク《クリスタル(結晶)型小物入れ》(1911年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵 右)ヨゼフ・アイゼルト《蓋付ガラス》(1923年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

左)パヴェル・ヤナーク《クリスタル(結晶)型小物入れ》(1911年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵
右)ヨゼフ・アイゼルト《蓋付ガラス》(1923年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

 

それが「1930年代:シンプルなかたちと機能性」に入ると、ラジスラフ・ストナル、カール・ゴルドベルク社の《グラスセット》(1930年)や、ラジスラフ・ストナル、ロケット磁器工場の《食器セット》(1932年)のように、機能性が追求される。

 

ラジスラフ・ストナル、カール・ゴルドベルク社《グラスセット》(1930年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

ラジスラフ・ストナル、カール・ゴルドベルク社《グラスセット》(1930年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

ラジスラフ・ストナル、ロケット磁器工場の《食器セット》(1932年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

ラジスラフ・ストナル、ロケット磁器工場の《食器セット》(1932年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

 

「1950‐60年代:日常生活と応用美術の解放」の章扉の下に置かれているのが、ラドミール・ホフマン、トン社の曲げ木の《椅子》(1967年)と、ミロスラフ・ナヴラーチルの《シェルチェア》(1959年)。50年代後半以降はデザインの自由化が進み、新素材であるプラスチックを取り入れた製品が出てくる。ヤロスラフ・フランチシェク・コフ、チェスカー・ズブロヨフカ社ストラコニツェ工場の《チェゼタ・スクーター「501型」》(1957年、個人蔵)も出品されている。

 

ミール・ホフマン、トン社《椅子》(1967年、左)と、ミロスラフ・ナヴラーチルの《シェルチェア》(1959年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

ミール・ホフマン、トン社《椅子》(1967年、左)と、ミロスラフ・ナヴラーチルの《シェルチェア》(1959年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

ヤロスラフ・フランチシェク・コフ、チェスカー・ズブロヨフカ社ストラコニツェ工場《チェゼタ・スクーター「501型」》(1957年、個人蔵)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

ヤロスラフ・フランチシェク・コフ、チェスカー・ズブロヨフカ社ストラコニツェ工場《チェゼタ・スクーター「501型」》(1957年、個人蔵)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

 

70年代に進むと、多くの巨大団地が建てられ、個人住宅のインテリアは画一化される。70年代には家具デザインはポストモダンの傾向が現われる。ヤン・シュラーメク、ズビニェク・フジヴナーチュ、ヤン・ボチャンの《アームチェア(オオサカ)》(1969年)や、ミハル・ブリクスの《椅子》も展示されている。「1990年代から現代まで」の章にもヤン・チュトゥヴルニークの《椅子(コクシー)》(2005年)と、ジェリー・コザの《多機能椅子(でんぐり返し)》(2002年)が登場する。

 

左)ヤン・シュラーメク、ズビニェク・フジヴナーチュ、ヤン・ボチャン《アームチェア(オオサカ)》(1969年、左)と、ミハル・ブリクス《椅子》チェコ国立プラハ工芸美術館蔵 右)ヤン・チュトゥヴルニーク《椅子(コクシー)》(2005年)と、ジェリー・コザ《多機能椅子(でんぐり返し)》(2002年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

左)ヤン・シュラーメク、ズビニェク・フジヴナーチュ、ヤン・ボチャン《アームチェア(オオサカ)》(1969年、左)と、ミハル・ブリクス《椅子》チェコ国立プラハ工芸美術館蔵
右)ヤン・チュトゥヴルニーク《椅子(コクシー)》(2005年)と、ジェリー・コザ《多機能椅子(でんぐり返し)》(2002年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

 

このほか「おもちゃ」の章では、ヴァーツラフ・シュバーラの《小箱(悪魔)》(1921年)や、ヤロスラヴァ・シェテリーコヴァーの《キツネ》(1993年)など、楽しい展示品が盛りだくさんだ。アニメのコーナーには、ズデニェク・ミレルによるチェコ屈指の人気キャラクター「もぐらのクルテク」などを、アニメーション上映とともに紹介している。

 

左)ヴァーツラフ・シュバーラ《小箱(悪魔)》(1921年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵 右)ヤロスラヴァ・シェテリーコヴァー《キツネ》(1993年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

左)ヴァーツラフ・シュバーラ《小箱(悪魔)》(1921年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵
右)ヤロスラヴァ・シェテリーコヴァー《キツネ》(1993年)チェコ国立プラハ工芸美術館蔵

 

チェコには2005年春訪問し、プラハ城や大聖堂とともにムハ美術館などを巡った思い出がよぎる。その後、ミュシャの壮大な連作《スラヴ叙事詩》を2017年、東京国立新美術館で鑑賞した。スラブ民族1000年に及ぶ栄光と苦難の歴史をモチーフに、筆を起こした。神々の情景から始まり、圧政に苦しむ人々を見つめ、理想を抱いて立ち上がる人々を描いたのだった。こうした苦難と激動の中で、ミュシャをはじめ芸術家の創造性に感動する。

 

チェコ・デザインの100年を、家具やプロダクト、ポスターのほか、おもちゃやアニメまで約250点もの作品でたどる旅は、その豊富な内容とともに遊び心に満ちている。展覧会は岡崎市美術博物館に始まり、富山県美術館、世田谷美術館を巡回し、京都国立近代美術館が最後の会場だ。広くヨーロッパのデザインに影響をもたらせた、この展覧会はお勧めだ。

 

 

新型コロナによる緊急事態宣言解除に伴い、各地で展覧会が再開さているが、感染再燃の危険性もあり、従来と同じ形での運営は難しく、京都市京セラ美術館では事前予約制にし30分で50人までの入場としている。他の館でも、来館者のマスク着用や検温や消毒液使用などを義務付けている。今後、コロナへの不安が解消された場合に、美術展は「コロナ前」と同じ状態に戻るのだろうか。これまで集客をあてこみ、「密」の状態で開催されていた国際展などは見直しが迫られることになりそうだ。私たち鑑賞者も、話題性を求めてではなく、じっくり美術を鑑賞するあり方が問われているといえる。