最終展開催の名古屋ボストン美術館

最終展開催の名古屋ボストン美術館

世界屈指の規模を誇るアメリカのボストン美術館の姉妹館として1999年に開館した名古屋ボストン美術館は、今秋幕を下ろすことになった。美術ファンにとって不幸なことだが、20年間にわたる活動を締めくくる最終展「ハピネス~明日の幸せを求めて」は、10月8日まで開かれている。「幸せ」を求めてきた人間の営みを様々な視点でとらえつつ、過去の展覧会でおなじみの懐かしい作品や、今までご紹介する機会のなかった初出品の作品と一部他館の作品を加えた85点を、洋の東西を問わず幅広く展示している。ゴーギャンやモネ、蕭白らボストン美術館所蔵の名品の数々を公開し、日本とアメリカの美の架け橋であっただけに、これまでの歩みも振り返りリポートする。

世界の名画を披露、浮世絵も里帰り

アメリカ東海岸のマサチューセッツ州にあるボストン美術館は、1870年に財界や教育界、文化関係者らの有志らが設立し、1876年の独立記念日に開館した。2020年に設立から150年を迎える同館は、国や州の財政的援助を受けず、ボストン市民はじめ、個人コレクターや企業によって、コレクションの拡充を続け、現在は約50万点の作品を所蔵する。

 

ボストン美術館のコレクションは、古代エジプト美術をはじめ、中国や日本の美術、フランスやアメリカの絵画のほか、版画・写真、現代美術に至るまで、世界有数の規模と質を誇る。とりわけ約10万点を有する日本美術と、フランス絵画は世界屈指だ。

 

名古屋ボストン美術館は1991年、 名古屋商工会議所常議員会で名古屋ボストン美術館設立準備委員会設置を決め、95年には愛知県と名古屋市が支援することになり、ボストン美術館との間で「名古屋ボストン美術館」の設立契約が結ばれた。1999年4月に開館した。

 

開幕を飾ったのは、「モネ、ルノワールと印象派の風景」の第1回展と「エジプト・ギリシャ・ローマ 古代地中海の世界の美術」の常設展で、開館前に300人の行列ができ、この日だけで4500人、期間中に44万8000人。

 

名古屋ボストン美術館で今年2~7月には、「ボストン美術館の至宝展 東西の名品、珠玉のコレクション」が催され、古代エジプト美術から、曾我蕭白らによる日本美術と、中国美術の名品、モネやゴッホを含むフランス絵画、さらに現代美術まで幅広い分野から選りすぐった傑作80点が出品された。この展覧会は昨年来、東京都美術館、神戸市立博物館も巡回している。

 

これまでもボストン美術館の名品展は、テーマを変え、各地で繰り返し開催されてきたが、名古屋に姉妹館があったことで、各地への役割を担ってきたといえる。名古屋ボストン美術館には5度足を運んでいるが、巡回先の他の美術館でボストン美術館所蔵のモネやルノワール、浮世絵の名品などを数多く鑑賞することができた。それだけに今回の最終展は、感慨深いものがあった。

蕭白の《琴棋書画図》は襖にして初出品

最終展となった「ハピネス」展とは、「幸せ」は永遠の課題でもあり、粋なタイトルだ。個人によって異なるが、アートのめざす究極の目標も「幸せ」かもしれない。名古屋ボストン美術館では、鑑賞者に「日常における幸せ、四季の美しさを愛でる幸せ、100年前のボストニアンたちが夢見た桃源郷ユートピア、現代アートにみる幸せの表現…展覧会を巡りながら、ご自身の『幸せ』に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか」と呼びかけている。

 

展示5つの章で構成されている。図録などを参考に主な作品を紹介する。第1章は「愛から生まれる幸せ ~日常の情景から~」で、家族や友人、恋人同士の親しい関係を捉え、愛に満ちた日常の情景を描いた作品が並ぶ。ウィリアム=アドルフ・ブーグローの《兄弟愛》(1851年)は、タイトルでは世俗の家族を思わせながら、幼いイエスと年長の男児をヨハネ、両腕に二人を抱きしめている青いドレスの女性を聖母マリアになぞらえて描いた作品とされる。

 

ウィリアム=アドルフ・ブーグロー《兄弟愛》(1851年)    Gift of the Estate of Thomas Wigglesworth, 08.186 ボストン美術館蔵、    Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

ウィリアム=アドルフ・ブーグロー《兄弟愛》(1851年) Gift of the Estate of Thomas Wigglesworth, 08.186 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

 

巨匠の作品が続く。ジャン=フランソワ・ミレーの《縫物のお稽古》(1874年)では母親から縫物の手ほどきを受ける娘が、ピエール=オーギュスト・ルノワールの《ガンジー島の海辺の子どもたち》(1883年頃)では、リゾート地の海辺で憩う姉弟たちの情景が捉えられている。時代は下って、スコット・プライアの《ナニーとローズ》(1983年)は、家族の一員となった愛犬と飼い主の女性を描く。いずれも日常のささやかな「幸せ」が伝わってくる。

 

左)ジャン=フランソワ・ミレー《縫物のお稽古》(1874年) Gift of Martin Brimmer, 76.1 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston 右)スコット・プライア《ナニーとローズ》(1983年) Gift of the Stephen and Sybil Stone Foundation,1984.135, c Scott Prior ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

左)ジャン=フランソワ・ミレー《縫物のお稽古》(1874年) Gift of Martin Brimmer, 76.1 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston
右)スコット・プライア《ナニーとローズ》(1983年) Gift of the Stephen and Sybil Stone Foundation,1984.135, c Scott Prior ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

ピエール=オーギュスト・ルノワール《ガンジー島の海辺の子どもたち》(1883年頃左手前)などが並ぶ展示室 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

ピエール=オーギュスト・ルノワール《ガンジー島の海辺の子どもたち》(1883年頃左手前)などが並ぶ展示室 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

 

この章では古今東西の作品も。《プタハイルアンクとニアンクハトハル座像》(エジプト、古王国時代)は、妻の手は夫の腰に触れるほほえましい夫婦像だ。喜多川歌麿の《夏の宵》(江戸時代、1806年)は、あでやかな江戸情緒の母に連れられた子どもと、じゃれつく子犬のほのぼのした姿が印象的だ。

 

左)《プタハイルアンクとニアンクハトハル座像》(エジプト、古王国時代、前2472-2455年頃) ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston 右)喜多川歌麿《夏の宵》(江戸時代・1806年)Gift of Miss Lucy T.Aldrich, 47.15 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

左)《プタハイルアンクとニアンクハトハル座像》(エジプト、古王国時代、前2472-2455年頃)Harvard University-Boston Museum of Fine Arts Expedition, 12.1488 
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston
右)喜多川歌麿《夏の宵》(江戸時代、1806年)Gift of Miss Lucy T.Aldrich, 47.15 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

 

第2章は「日本美術にみる幸せ ~自然と人間~」。花鳥風月を愛で、自然と関わり大切にする日本や中国では、「桃源郷」や仙人の住む「仙境(仙郷)」などの理想郷、もしくは四季の中での行事や娯楽に「幸せ」を求めてきた。

 

曾我蕭白の《琴棋(きんき)書画図》(江戸時代、1760年ごろ)は、中国故事の伝統的画題で、琴(音楽)、棋(囲碁)、書(書道)、画(絵画)の4つの風流事を嗜む理想の高士像を描く。六曲一双の屛風として所蔵されていたが、修復作業の過程で画中に引手穴があったことが判明した。屛風絵から本来の襖絵に仕立て直しをして初めての公開で、今回の展覧会の注目作品だ。同時に襖1面分が失われていたことも分かり、そこに見当たらない「棋」の部分が描かれていた可能性があるという。

 

曾我蕭白《琴棋書画図》(江戸時代・1760年頃)左6面 Fenollosa-Weld Collection, 11.4511.1-3, 11.4512.1-6 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

曾我蕭白《琴棋書画図》(江戸時代、1760年頃)左6面 Fenollosa-Weld Collection, 11.4511.1-3, 11.4512.1-6 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

曾我蕭白《琴棋書画図》(江戸時代・1760年頃)右3面  Fenollosa-Weld Collection, 11.4511.1-3, 11.4512.1-6 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

曾我蕭白《琴棋書画図》(江戸時代、1760年頃)右3面  Fenollosa-Weld Collection, 11.4511.1-3, 11.4512.1-6 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

左)《琴棋書画図》(部分)ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston 右)《琴棋書画図》(部分)ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

《琴棋書画図》(部分)Fenollosa-Weld Collection, 11.4511.1-3, 11.4512.1-6
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

 

としか(※作家名)の《見立 四睡図》(江戸時代、1844年)も初出品だ。中国の高層と弟子の寒山拾得、高僧になつく虎が一緒にまどろむ「四睡図」を、作者の洒落で、江戸流に遊女と二人の子、猫に見立てた作品だ。

 

としか《見立 四睡図》(江戸時代・1844年)  Fenollosa-Weld Collection, 11.4638 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

としか《見立 四睡図》(江戸時代、1844年) Fenollosa-Weld Collection, 11.4638
ボストン美術館蔵、hotographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

 

第3章は「ことほぎの美術」で、お金持ちや長生きなど、とにかく「幸せになりたい」との願いを託した造形が、古来より数多く作り出されてきた。色や模様、縁起の良い文字、宝船に七福神、今でも身近な鶴に亀、松竹梅といった吉祥モチーフからは、「幸せ」を求める人々の思いを見ることができる。

 

左)葛飾北斎《寿字と唐子図》(江戸時代・1845年) William Sturgis Bigelow Collection, 11.7420 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston 右)《浅葱繻子地宝船模様掛袱紗》(江戸時代・19世紀半ば) William Sturgis Bigelow Collection, 11.3805 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

左)葛飾北斎《寿字と唐子図》(江戸時代、1845年) William Sturgis Bigelow Collection, 11.7420
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston
右)《浅葱繻子地宝船模様掛袱紗》(江戸時代、19世紀半ば) William Sturgis Bigelow Collection, 11.3805
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

葛飾北斎の《寿字と唐子》(江戸時代、1845年)は、「寿」の一字とその下の賛が98歳の花井白叟の作で、86歳の北斎が戯れる二人を描いた合作とされる。《浅葱繻子地(あさぎしゅすじ)宝船模様掛袱紗(ふくさ)》(江戸時代、19世紀半ば)は、刺繍で宝物を満載した宝船の吉祥文様を描く。名古屋市博物館所蔵の正木章惣三郎作《宝船置物》(江戸時代後期、19世紀半ば)も特別出品されている。このほか《紅綸子地(べにりんずじ)松鶴波亀模様打掛》(江戸時代後期、19世紀後半)も展示されている。

 

《宝船置物》(江戸時代後期・19世紀半ば、名古屋市博物館蔵)

《宝船置物》(江戸時代後期、19世紀半ば、名古屋市博物館蔵)

左)《紅綸子地松鶴波亀模様打掛》(江戸時代後期・19世紀後半) William Sturgis Bigelow Collection, 11.3863 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston 右)ヴァージニア・ローデン(別名:ウスラートラ[日の出])《水壺》(1993年)Museum purchase with funds donated by Dr. and Mrs. John Robinson, Mr. and Mrs. William H.M. Glazier, Mr. and Mrs. Roger H. Hallowell, and Mr. and Mrs. John P. Parker, 1993.670 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

左)《紅綸子地松鶴波亀模様打掛》(江戸時代後期、19世紀後半) William Sturgis Bigelow Collection, 11.3863 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston
右)ヴァージニア・ローデン(別名:ウスラートラ[日の出])《水壺》(1993年)Museum purchase with funds donated by Dr. and Mrs. John Robinson, Mr. and Mrs. William H.M. Glazier, Mr. and Mrs. Roger H. Hallowell, and Mr. and Mrs. John P. Parker, 1993.670 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston


第4章の「アメリカ美術にみる幸せ」から展示の趣が変わる。素朴ながら味わい深い作品が人々の生活に彩りを添えたアメリカン・フォークアートの世界が広がる。そんな一例がジョン・F.フランシスの《3人の子ども》(1840年)で、正方形の画面に表情豊かな兄妹が写実的に表現されている。

 

ジョン・F.フランシス《3人の子ども》(1840年) Gift of Maxim Karolik for the M. and M. Karolik Collection of American Paintings, 1815-1865, 47.1142 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

ジョン・F.フランシス《3人の子ども》(1840年) Gift of Maxim Karolik for the M. and M. Karolik Collection of American Paintings, 1815-1865, 47.1142
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

一際目立つ作品に、伝グスタフ A. ダンツェル・カルーセル社、サルヴァトーレ・チェルニリアーロ(通称ケルニ)制作の《メリーゴーラウンドの豚》(1905年頃)がある。見るだけでも愛らしい豚の彫刻で、実際のメリーゴーラウンドにあれば人気の的であろう。

 

伝グスタフ A. ダンツェル・カルーセル社、サルヴァトーレ・チェルニリアーロ(通称ケルニ)制作《メリーゴーラウンドの豚》(1905年頃) Mary E. Moore Gift, 2001.545 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

伝グスタフ A. ダンツェル・カルーセル社、サルヴァトーレ・チェルニリアーロ(通称ケルニ)制作《メリーゴーラウンドの豚》(1905年頃) Mary E. Moore Gift, 2001.545
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

《メリーゴーラウンドの豚》の展示風景

《メリーゴーラウンドの豚》の展示風景

後半の「東西の出会い ~心の平安を求めて~」に展示されている《踊るシヴァ神》(1800年頃)は、高さ、横幅とも1メートルを超す存在感のある作品で初出品だ。日本美術を収集したフェノロサやビゲローも、東洋に精神的な理想郷を求めて来日したボストニアン(ボストン出身者)だ。ボストニアンが夢見た東洋思想に思いが巡る。

 

《踊るシヴァ神》(1800年頃) Marianne Brimmer Fund, 21.1828 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

《踊るシヴァ神》(1800年頃) Marianne Brimmer Fund, 21.1828
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

最後の第5章は、「アートの世界につつまれて」。ここでは「幸せ」を意識せず、作品の中に身を置いてみることのメッセージを込めて、2011年の「ジム・ダイン」展で紹介しきれなかったハートをかたどった作品シリーズが大集合といった趣向だ。ジム・ダイン《ザ・ワールド(アン・ウォルドマンのために)》(1971-72年)などが、ずらりと並ぶ。

 

ハートをかたどったジム・ダインの作品シリーズ ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

ハートをかたどったジム・ダインの作品シリーズ
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

「ハピネス」展を担当した名古屋ボストン美術館の宮永郁恵学芸員に、企画の趣旨などについて、次のようなコメントを寄せていただいた。

お客様にどんな作品を見ていただこうか、館内のスタッフ、そしてボストン美術館とも相談し、幸せな気持ちで見終わってほしい、最後の展覧会でありながら、未来に続くような内容にしたい、ということで意見が一致しました。幸せの定義はひとそれぞれですが、明日の幸せに向かって生きる姿勢は、共通するのでは…ということから、タイトルが決まりました。お客様には日常における幸せ、四季の美しさを愛でる幸せ、100年前のボストニアンたちが夢見た桃源郷(ユートピア)などご覧いただき、ご自身の「幸せ」に思いを巡らせていただきたいです。

市民や鑑賞者にとって「幸せ」とは?

名古屋ボストン美術館では、これまで20年間に、ボストン美術館所蔵の作品を軸に企画展を60回近く開催してきた。ボストン美術館が誇る世界の名画も、開館10周年の「ゴーギャン展」に《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》(1897-98)、開館3周年と開館15周年の「ミレー展」に《種をまく人》(1850年)、2015年の「華麗なるジャポニスム展」にモネの《ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)》が、それぞれ披露された。2012年の「日本美術の至宝」では、蕭白の大作《雲龍図》が里帰り公開された。

 

ポール・ゴーギャン《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》(1897-98年)   Tompkins Collection-Arthur Gordon Tompkins Fund 36.270 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston

ポール・ゴーギャン《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》(1897-98年)
Tompkins Collection-Arthur Gordon Tompkins Fund 36.270
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston
第21回「ゴーギャン展」(2009年)で展示

ジャン=フランソワ・ミレー《種をまく人》(1850年) Gift of Quincy Adams Shaw through Quincy A. Shaw Jr. and Mrs. Marian Shaw Haughton 17.1485 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston   第7回「ミレー展」(2002年)と第33回「ミレー展」(2014年)で展示

ジャン=フランソワ・ミレー《種をまく人》(1850年)
Gift of Quincy Adams Shaw through Quincy A. Shaw Jr. and Mrs. Marian Shaw Haughton 17.1485
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston
第7回「ミレー展」(2002年)と第33回「ミレー展」(2014年)で展示

クロード・モネ《ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)》(1876年) 1951 Purchase Fund 56.147 ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston   第35回「華麗なるジャポニスム」(2015年)で展示

クロード・モネ《ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)》(1876年) 1951 Purchase Fund 56.147
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston
第35回「華麗なるジャポニスム 印象派を魅了した日本の美」(2015年)で展示

曾我蕭白《雲龍図》の展示  ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston 第29回「日本美術の至宝」展(2012年)

曾我蕭白《雲龍図》の展示 
ボストン美術館蔵、Photographs (C) Museum of Fine Arts, Boston
第29回「日本美術の至宝」展(2012年)

 

今回の最終展で、名古屋ボストン美術館が無くなることは誠に残念なことだが、予定していた20年の契約満了ということもあり、使命を果たしたといえる。馬場駿吉館長は、「一般の美術館とは異なり、独自のコレクションは持たず、専らボストン美術館に収蔵されている優れた作品を展示・紹介することを基本として出発しました。名古屋に居ながらにして、米国が世界に誇るボストン美術館のコレクションを鑑賞できる使命を全うして閉館することになりました。日米文化交流の高まりを実感させられました」と回顧する。

 

一方、ボストン美術館では、契約に基づく多額の寄付もあって、展覧会を通して450万人もの来館者があったこと、1200点以上の作品が修復されたことを評価する。マシュー・テイテルバウム館長は、「国同士の文化交流において、美術館の果たす役割を示した私たちの歴史的なパートナーシップを祝福したいと思います」の言葉を寄せている。

 

両館の契約内容は、当初ボストンの所蔵品と他の美術品を一緒に展示できないなど、名古屋側に不利な内容となっていた。その後の交渉で、原則として米国ボストン美術館の展示に合わせていた企画展に関し、名古屋側が独自に設けた委員会の意見を取り入れながら内容を決定して開催できるように変更された。

 

このため著名な芸術家など魅力的な独自の企画展の開催、地元に密着した企画の増加、子供の教育に関係した展示の拡大を図った。

 

新たに契約を更新し存続について、名古屋国際芸術文化交流財団でも種々検討を重ねてきたが、資金面を理由に閉館せざるを得ない結論に達したようだ。これに対し、一部識者には、「美術館は一度つくったら続ける義務がある」との見解もある。

 

名古屋ボストン美術館は、JR東海道・中央本線、地下鉄名城線、名鉄名古屋本線が集結する金山駅南口に隣接する金山南ビルの4・5階に展示室が入居する。展示面積は合わせて1100平方メートルを超える。交通の便宜に恵まれこれだけの設備を誇る美術館は、全国的に見ても数少ない。5階には、レクチャールームや図書コーナーも備える。

 

「ハピネス」展をじっくり鑑賞した後、図書コーナーに立ち寄った。広いスペースに応接ソファがあり、ゆっくりくつろげる。美術図書や、過去に開催した展覧会図録も自由に閲覧できる。猛暑の中、ここはクーラーでほどよく冷房されている。まさに「ハピネス」の心地に浸った。

 

本拠のボストン美術館はボストン市民によって支えられている。もっと名古屋市民や愛知県民、県外旅行者が美術館を訪れていたら、美術を愛する日常の「幸せ」を鑑賞者が広く深く実感していたならば、と惜しみながら名古屋ボストン美術館を後にした。

 

 

広いスペースで、ゆっくりくつろげる図書コーナー

広いスペースで、ゆっくりくつろげる図書コーナー