第20ステージ

遂にアルプス決戦最終日。ガリビエ峠の地すべりでコースが使えないため、今年は超級2つ、クールドフェイユとアルプデュエズを越える110kmのショートステージとなった。キンタナとフルーム差は僅か2分40秒弱。フルームに大きなアクシデントが起きない限り、現実的なタイム差ではないものの、ここ数日はスカイのアシストも崩壊しかけており、フルームも序盤ほど調子が上がっていないようにも見える。一方モビスターはキンタナ、バルベルデと絶好調だ。バルベルデはレース前、”all or nothing”とコメントしており、どのような奇襲攻撃を仕掛けてくるか、見ものであった。

レースは開始直後から激しいアタック合戦になる。ツール最後のステージ。逃げに乗りたい選手はたくさんおり、フランス人、チームでステージを取れていないチーム、総合トップ10を狙える選手、総合優勝争いで逃げにアシストを入れておきたいチーム、国際映像に映ってツールの手土産が欲しい選手。さらにはタイムアウトを恐れてか、カベンディッシュまでもがアタック合戦に絡んでくるシーンも見せた。

最終的に、今日は逃げ切りを許したくないチームが動き、4人のみの先頭集団が形成され、1つ目の峠に突入した。メイン集団は、バルデの山岳賞ジャージを獲得するため、AG2Rが積極的にペースアップ。慢心創意のペローが積極的に引き、集団を小さくしていく。しかし、肝心のバルデが耐え切れず、現実的に山岳賞は今日ステージ上位でゴールした総合勢に絞られた。

小さくなった集団から飛び出したのはバルベルデ。スカイは反応せず、きたるキンタナのアタックに備えた。しかし、フルームは調子が悪いのか、キンタナのアタックについて行けない。前方にバルベルデとキンタナ。後方でフルームとポート。力比べになった。ポートは前日、早々に集団から離れたが、全ては今日のこのときのためだった。もし、ポートが今日いなければ、フルームは1人で2人に勝負を挑まなければならなかった。山頂が近づき、バルベルデのペースが落ちる。しかし、キンタナはここで置いていくわけにはいかない。一方、フルームもペースが上がらないので拮抗した状況が続いた。

山頂をモビスター勢が先に通過。このままタイム差を広げ、アルプデュエズに入ることが出来れば、逆転の可能性も見えてきた。しかし、下りに入り、スカイのアシスト陣が復帰。2人もつかまり、勝負は最後にもつれ込んだ。

アルプデュエズに入り、勝負が始まる。まずはニーバリ。前日の撥が当たったのか、パンクしたがもちろんこのタイミングで集団がペースダウンすることはない。キンタナ、バルベルデと攻撃を開始。しかし、鉄壁のスカイが全て封じ込める。その後も攻防が続き、遂にフルームが遅れる。そこで、キンタナが飛び出し、バルベルデ、アナコメスさらには逃げから降ってきたランプレのコロンビア出身、セルパまでもが必死になってキンタナを引っ張る。タイム差は見る見る開いていき、不可能と思われたタイム差がひっくりかえるかと思われた。しかし、ポートが実に献身的な走りをする。レース後、彼は鼻声で1週間風邪を引いていたことを明かした。しかし、それでもフルームを押し上げ、なんとかタイム差を死守することができた。

モビスターは素晴らしい走りをした。終わってみれば、タイム差は1週目の横風で付いた分のみ。もし、昨日のステージで早めに仕掛けていれば、、、と思うところもあるが、来年以降、タイムトライアルと山岳の割合次第では、今年優勝できなかったことは後々後悔するかもしれない。

一方スカイ。フルームの序盤の調子の良さはさすがに最後まではもたなかった。人間であることを少しは証明したのかも知れない。1週目からマイヨジョーヌを持ち続け、最終週まで集団を牽引しかなりの疲労度であることは間違いない。そんな中でも、ポートをはじめ強力なアシスト陣に囲まれていたお陰で最後までタイム差を守れた。

その他の総合勢。ニーバリは確実に実力で総合優勝には遠かった。コンタドールは、去年のブエルタのフルームとの争いを見る限り、やはりジロでの疲労があったのは事実。ジロを楽々勝つ予定であっただろうが、今年のジロは非常に厳しく、最終週にはアスタナに攻撃されたため疲労がたまっていたのだろう。TJは調子が悪くなければ3週目まで激しい攻防ができたかも知れない。来年、トレックへの移籍が騒がれているが、また来年のツールで上位争いを繰り広げられるかもしれない。

(参考)
“Every rider is a little bit on their tiptoes going up [Saturday’s] stage, a little bit on edge about what’s going to happen up there,” said Froome.“We know the crowds up there have been partying the last couple of nights, by the time we arrive they’ll be fully into it.“Everyone’s a bit nervous about getting through there, but hopefully it won’t be too different to last time [in 2013] and it will just be a great atmosphere on the climb and the race isn’t going to get affected in any way.” フルーム レース前みんな今日のステージ、アルプドュエズの山頂のことを心配してる。みんな何日も前からパーティーをしていて僕らが到着する頃には最高潮になるんだ。そこを通ることにみんな少し恐れている。前回、2013年に通ったときみたいにレースが観衆に左右されないことを願うよ。
 “It was only 110km but it felt like it was 300! It was such a hard stage!” フルーム レース後
たった110kmのコースが300km越えに感じるほどきついステージだったよ。
 “I gave everything right from the first week. We had some difficulties because I had crashed and I was alone in the wind. I lost a minute and 30 seconds and that’s what lost me the Tour,” said Quintana.“It was the last day and I had to try, I had to go for it,” said Quintana. “I thought we could get away on the Col de la Croix de Fer but it didn’t work.“I tried again on the final climb and got some time but it wasn’t enough and I lost the Tour.” キンタナ
1週目から良く出来ていた。我々は落車や横風の中孤立したりといくつかの困難があった。そこで1分30秒失って、それが総合で失ったタイムの全てだ。今日は最終日で全力で攻撃しなければならなかった。1つ目の峠で抜け出すことが成功すると思ったんだけどそうはいかなかった。最後も攻撃したけど届かなかった。今年のツールは負けだね。
 @albertocontador did a Good Tour de France. He came after winning Giro, overall he is the best rider of 2015! オグレディー
コンタドールはツールでよくやった。彼はジロで勝った後に来てるんだ。総合したら彼が2015年最高のライダーだよ。

第21ステージ

3週間の戦いを終え、ツールはパリに帰ってきた。シャンゼリゼでのロードレースでゴールする場合は通常、シャンゼリゼに入るまでパレードレースとなる。ルールでは決められていないが、選手、スタッフ全ての人が全ての人をたたえて走ることになっている。昨日のゴール時点で各チームパーティーを開き、夜遅くまでお酒を飲むのが通例だ。一方、ピュアスプリンターはスプリンターにとって最高の称号であるシャンゼリゼでの勝利に向けて昨晩は緊張感が走っていただろう。今日の優勝候補は今大会絶好調のグライペル。キッテル不在のシャンゼリゼで勝利を挙げたいところだ。

レースは雨のため、シャンゼリゼに入ったところでステージ優勝争い以外はニュートラルとなった。しかしフィナーレを迎える頃には空が明るくなり、定石通りのスプリンターによる集団スプリントへ。最後までトレインを形成できた唯一のチームはロットソーダル。コンコルド広場の最終コーナーを完璧な位置で回ったグライペルが圧倒的な力を見せつけて今大会4勝目を上げた。キッテル不在で真のキングオブスプリンターかはわからないが、ピュアスプリンターには厳しいと言われた今大会で4勝という結果は、キャリア最高のものになっただろう。

総合優勝は2年ぶり2回目のフルーム。昨年は序盤から落車が相次ぎ、勝負することすらできなかったが、今大会は一度も落車することなくゴールした。前半の力は圧倒的だったが、特に最後の数日間は彼もロボットではない部分が垣間見えた。しかし、きつい状況でもうまくまとめられる能力が、グランツール、特にツールドフランスで総合優勝するために1番大事な能力だということが改めてわかった。

2位のキンタナは1週目、横風で失ったタイムがそのまま反映されてしまう形になった。今大会でフルームと互角に山岳で戦えたのはキンタナしかいない。来年以降、TTの配分次第では厳しくなるだろうが、まだ新人賞争いをしていた彼が、来年以降戦術的にも成長すれば、ツールでの優勝はそう遠くないだろう。

3位のバルベルでは、キンタナのアシストとしてスタートしたが終わってみると自身最高位でのフィニッシュとなった。彼自身も来年以降もう一度グランツールでの総合優勝を狙ってみたいと間違いなく考えているだろう。

ニーバリは明らかに総合争いには一歩足りなかったように見えた。コンタドールは、今年の厳しいジロの後で回復しきれていなかった。ジロでの圧倒的な走りができていれば、フルームと互角に戦えたかもしれない。TJは残念ながらリタイアに終わったものの、数年前から大物になると騒がれていただけの実力が十分証明された。

スーパー敢闘賞はフランス人のバルデに渡ったものの、半分以上のステージでトップ10でのゴールをし、マイヨベール4連覇を決めたサガンが今大会最強の選手と言わざるを得ない。4年前、衝撃的なデビューを飾った時に比べると脚質が大きく変わり、いつのまにかクライマーと対等に登りをこなすまでに成長した。今後、グランツールで総合争いができるかはわからないが、間違いなくまた来年もまた魅せてくれるだろう。