第10ステージ

休息日明けの第10ステージ。革命記念日、そして集団はヨーロッパでも最も自転車熱の高いバスク地方に入り、フランス勢としてはなんとしてでも勝利が欲しい。総合勢は、山岳初日からあまり大きな動きを見せないと思われていた。休息日明けは調子をコントロールするのが難しく、フルームとしてはタイム差なしでゴールできれば十分。攻撃を仕掛けるなら大きく遅れてしまっているニーバリ。コンタドールは初日から攻撃し失速するより、翌日のようなタイム差が生まれやすいステージで攻撃に出ることが賢明だろう。ステージ優勝はフランス期待のバルデ、ペロー、バルギルや去年革命記念日にマイヨジョーヌを獲得したギャロパンがステージを取ることが予想できた。

スタート後、やはりフランス人中心にアタック合戦が繰り広げられ、総合に関係ない2人が飛び出す。リーダーチームのスカイは逃げを捕まえることには全く興味を示さず、今大会最大の逃げタイムが付き一時は15分台も見えた。フランス期待のバルギルは単独でボトルを踏んでしまい右足を強打。かなり厳しい表情をしていたが4分後に再スタートを切った。

逃げを許さなかったのはモビスター。キンタナの調子がよく、タイムボーナスを稼ぎたいのか、中盤から率先して集団を牽引し、上り口までに大きくタイムを縮めた。2人逃げで、最後は超級山岳なので、ステージ優勝には上り口に入るときにタイム差が10分は必要だっただろう。

今大会初の超級の上りに入り、集団は逃げを射程圏内においた。さすがバスク地方。観客は今まで以上に熱く、コスプレの観客も多い。上り口からも依然モビスター。へーシックは逃げの吸収と共にアタックを仕掛け、総合には関係ないのですぐに容認された。最初に遅れたのはニーバリ。やはりここまで遅れていたのは、単にバットデイだっただけでなく、実力的に山岳は厳しいのだろう。キンタナは落ち着いた表情で、最強のアシスト、バルベルデを使い、スカイに対して攻撃を仕掛ける。全てトーマス、ポートが対応。しかしフルームの表情は少し厳しそうに見えた。

バルベルデが仕事を終えると、トーマス、ポートとペースアップ。これにコンタドールが付いていけず、早くもキンタナとフルームの対決となる。フルームはさっきまでのきつそうな表情はなんだったのか、一気にペースを上げキンタナから大きな差を奪った。ポートも余裕の表情で2位に入っている。

フルームは調子がいいことは間違いないが、余裕は十分あった。さらに今日獲得したタイム差はよっぽどのことが無い限りひっくり返されることは無いだろう。たとえハンガーノックでもメカトラでも1ミスなら十分リカバリーで切るタイム差だ。トーマス、ポートも調子がよく、他のチームはまず協調してスカイのアシスト陣を潰していかなければならない。アスタナはニーバリより先にフグルサングをゴールさせた。総合上位の狙いを切り替えるかも知れない。

今後、よっぽどのことが無い限りレースは決定付けられるステージになった。まずはスカイ以外が連合を組み、フルームを失速させることが重要。総合が決りかけたことにより逃げも決りやすくなるだろう。ステージ、山岳賞争いも注目だ。

(参考)
“I just thought instead of riding a defensive race, ‘come on guys let’s push on here. Some guys are in trouble let’s take advantage of that.’
I’m in such a great position now and with such team around me. Guys like Richie Porte coming second, G just a few places back in fifth – it just shows the calibre of riders I’ve got supporting me. Hopefully now we can just ride a defensive race. Let’s see – there’s still a very long way to go to Paris but of course I’m ecstatic about how it went today.フルーム sky HP
今日は守りの走りをする予定だったけど、総合勢が遅れたことを知って攻撃をかけたんだ。
今は最高のポジションにつけていてチームメートも上位にいる。ポートは2位だし、トーマスは5位。これからは守りの走りだけ出来るよ。ただまだパリへの道のりは長い。でも今日はとにかく素晴らしかった。
“It’s one day in the Tour. We can’t get too carried away,” he told Eurosport. “We’ve seen in 2013 the first and second on the stage and then the disaster there. So we’re not getting too far in front of ourselves, but it’s still a fantastic feeling. ポート sky HP
たったツールの1日だ。2013年のツールで2日間は良かったけど3日目に悲劇が起きた。GCではなすことは出来たけどまだ素晴らしい感覚だよ。
“It was a complicated day. I knew it was going to be a climb, where you could lose a lot of time, if you weren’t in form and that’s what happened. It was the stage after the rest day, where one could lose a lot of time. I couldn’t breath and I still can’t – so I couldn’t get rid of the lactic acid in my legs and I couldn’t follow the pace. It was a bad day, and we’ve seen that Froome was better than everybody else. I was unable to follow the pace, not only of Froome but also of other riders” コンタドール tinkoff HP
大変な1日だった。山岳が始まることを知っていたし、もし調子が良くなければタイムを失うことも分かっていた。休息日の次のステージ、大きくタイムを失いやすい。呼吸が出来なかったし、今も出来ない。乳酸がたまってきたのを排出できなかったんだ。自分のペースすら作れなかった。今日はバットデイだった。フルームは誰よりも調子がいい。今日はフルームだけでなく多くの選手に着いていけなかった。
“It was a really hard stage, with hellish temperatures and big pace all day, especially since we took command of the peloton. We wanted to test our rivals’ condition, see how they were going, and we found a superior Chris Froome. He was really strong and we must accept that. We’ll try to find a strategy or some alliances to try and gain some time back or, at least, keeping our actual position. My winning chances? They shrank a bit today, but I keep dreaming about yellow, and will give my everything to snatch it.” キンタナ movistar HP
今日はきついステージだった。高温と速いペース、チームが集団をコントロールした時からね。ライバルのコンディションやどう攻撃するか見たかった。フルームには驚かされたよ。彼はかなり強いしそれを受け入れなくてはいけない。作戦を立てて、勝てる方法や最低でも現状維持しなければならない。ステージの可能性?まだマイヨジョーヌを夢見てるよ。ベストを尽くす。
“To be honest, it was a big blow by Froome today. We did a nice race, but we’ve got to be realistic: he was over the rest today. Let’s see if he can continue to do so for the rest of the race. Sky kept a high pace all the way when they took over, I tried to jump away to drop Froome’s team-mates back, but they were strong. It’s been a hard nine days before this stage, and the steep climb, combined with the heat… made everything impossible for many. Now, for us it’s a matter of keeping what we’ve got or improving our result if we’re able to. The Tour is not over at all, though it’s becoming harder to win. Still, we can hope for everything when it’s Nairo. Others like Contador, Nibali, Purito, Van Garderen cracked today, and the same can happen to us or any other rivals up to the end of the race.” バルベルデ movistar HP
正直、フルームにやられた。我々はいいレースをしてたしね。彼がどこまで維持できるか見てみないとね。スカイは牽引してから速いペースだった。攻撃して、スカイのアシストを潰そうとしたけど彼らは強かった。ここまでのステージきつかったし、上りはきつく暑さも激しい。すべてを不可能にしているよ。これから、とにかくベストを尽くすしかないよ。ツールは未だ終わっていない。勝つのが難しくなったわけでもない。今日起こったようなことが誰にでも起こるよ。
“Sky definitely put on quite the performance,” van Garderen said. “I tried my best to stay with them. When it got too much for me, I tried to stay in my rhythm and focused on getting to the top. I don’t think today was my best day. But it wasn’t all bad. I am still keeping a good GC (general classification) position.” TJ BMC HP
スカイは間違いなくすばらしいパフォーマンスだった。僕は全力で付いていこうとした。しかしそれはオーバーペースで自分のリズムで上ることに切り替えたんだ。今日は僕のベストの日ではなかったと思うよ。だから全てが悪いわけではない。まだGCではいいポジションにいる。

第11ステージ

ツールドフランスのコースに過去、80回も組み込まれているトゥールマレー峠を越える難しい山岳ステージ。さらに今年は、峠を越えた後に30kmの超高速ダウンヒルをこなし最後に6kmの上りをこなしてからのゴール。前日よりも仕掛けるポイントがたくさんあり、逃げやブリッジ、集団からの飛び出しなど幅広い展開が予想された。

前日に総合が大きく動いてしまい、タイム差を簡単にはひっくり返せなくなったので、逃げ切りし易い状況。各チーム、今大会初の逃げ切り勝利を目指し、序盤から激しいアタック合戦が繰り広げられる。最初の1時間を48.1km/hで駆け抜けた集団はスプリントポイントへ。決定的な逃げが容認されていなかったため、サガンが2位で通過。他のスプリンター勢は絡めずサガンが逆転でマイヨベールを獲得している。

その後、マイカ、ボクレール、デマール、ブーフマンなど有力な選手を含む大きな逃げが容認されてアスパン峠に入っていった。ビック5を含むチームからの逃げはマイカだけ。トゥールマレーでコンタドールが抜け出し、マイカにジョインできれば、下りを得意とする2人でフルームとのタイム差を縮めるといったオプションが作れた。しかし集団はスカイのコントロールによりペースダウン。逃げ切りが濃厚となってきた。

トゥールマレーに差し掛かり、マイカがアタック。逃げの中ではやはり昨年山岳で2勝あげているマイカの実力が光った。ボクレールなども必死に追うが、マイカにもう一度追いつくことは無かった。集団はスカイがペースを上げようとせず、ティンコフも前にマイカがいることで牽引はしない。アスタナがペースアップを図り、徐々に集団を小さくしていく。ポートが遅れるシーンも見えたが、最後はトーマスのコントロールで下りで合流することに成功している。

ティンコフはコンタドールのブリッジシフトからマイカのステージ狙いへチェンジ。無線が壊れるトラブルもあったが、逃げ切るには十分のタイム差でティンコフに今大会初のステージ優勝をもたらした。集団は最後の峠に入り、ニーバリが脱落。コンタドール、キンタナ、TJが仕掛ける様子は見られなかった。昨日同様、仕掛けた後にスカイの逆襲で大ブレーキをかけてしまうことを恐れているのだろう。

明日は最後のピレネー山岳ステージ。タイム差を挽回したい選手にとっては仕掛けるチャンスだ。しかし、ここまでのステージのハードな展開と暑さで疲労が蓄積されているのも事実。バルデは熱中症で大失速してしまった。フルームはよっぽどのことが無い限り力をセーブして走るだろう。スカイのアシスト陣も連日の疲れが見える。ニーバリ、コンタドールはやはり調子が悪い。キンタナは彼向きのツールで結果を残せるよう、失速を恐れず攻撃していくべきだ。

今日同様、逃げにも大きなチャンスがあるステージが続く。山岳賞争いも白熱しそうだ。

第12ステージ

ピレネー3連戦。最終日の舞台はホアキンの家があるアンドラから僅か50kmの地点。山岳が入り組んでおり、2級、1級、1級、超級と厳しいコース設定。今日もやはりスカイはアシストの仕事を最小限に抑えるため、逃げを容認し、優勝は逃げ切りが十分可能性あるステージだ。

気温が30度を超える厳しい暑さの中、逃げには22人が乗った。その中にはアルカンシェルのクフィアトコフスキー、ホアキン、フグルザンク、バルデなど強力なメンバーが揃った。スカイは完全に容認し、タイム差をどんどん開けていく。

最後の超級山岳、プラトードベイユに入る前に、逃げ集団からはクフィアトコフスキーが単独でアタック。ピュアクライマーがたくさん含まれる逃げの中で、長い上りはあまり得意としないクフィアトコフスキーは唯一のステージ優勝の可能性がある手段だった。しかし、逃げ集団からは強力なクライマーが追走を開始。フグルサンクやホアキン、シカール等が速いペースで追いかけ、クフィアトコフスキーは残り8キロほどでホアキン、フグルサンクに抜かれた。その後、ホアキンは独走態勢で今大会2勝目。フグルサンクが2位でフィニッシュした。総合上位勢には大きな変動が無い。

ホアキンは経験豊富で、選手間からもリスペクトの高い選手。普段は陽気なスペイン人だが、ユイの壁でステージ優勝をした時と同じ、高い集中力を見せたときの表情と同じ顔を最後の上りではしていた。狙ったステージは落とさない、そういったところがみんなから憧れられる所以だろう。フグルザンクは残念ながら2位で終わったが、総合でジャンプアップし、チームリーダーの座を獲得。若い頃からコンタドールなどのアシストでも強力な走りを見せていたので、今後の成長に期待がかかる。

(参考)
“I live 50 km from here and I am used to climbing here. I came here for the GC but now I’ve won two stages. I think for the team this is just as important. And also I’m starting to like this more than fighting for a 5th or 6th place in GC. プリート katiowa HP
ここから50km離れたところに住んでいてトレーニングに使っているんだ。総合のためにツールに来たけど、2ステージを取った。チームにとってとても大事なことだと感じる。総合を5位6位争いするよりよっぽど楽しい。
・プリートはカタルーニャ出身のクライマー。総合も十分狙える選手。現在は税金から逃れるためアンドラに住んでいて千回以上今日の峠を上っているという。
 “I was lucky to have Richie and Geraint with me when the attacks started and it made it a lot easier to control things with my team-mates in that position. I owe them both a beer tonight. フルーム sky
ポートとトーマスがアタック合戦が始まったときいてラッキーだった。コントロールしやすかったよ。今夜は2人にビールをおごるよ。
 Sky was strong but still my condition today was much better. We’ll see how the race will go and if it’s possible to take a step up in the GC. It was a difficult day. コンタドール tinkoff
スカイは強力だったけど。僕のコンディションは上がっている。レースがどうなるか、総合が上がりそうだったら頑張るよ。今日は大変な日だった。
 ・ビノクロフ大佐からアスタナのエースはニバリからフグルザンクにスイッチしたとの発表