第3ステージ

後半は春のクラシック・フレッシュワロンヌで使用されるコースを利用した短くも厳しいコース。優勝候補はバルベルデやホアキン、サガンといったクラシックに強い選手。短いが最大26%とも言われるユイの壁で総合勢もわずかながらタイム差が生まれることが予想できる。カンチェラーラはユイの壁初挑戦(?)だったが、タイム差を保ってゴールしマイヨジョーヌを守れる登坂距離だろう。

今日もあっさり4人の逃げが容認された。前日に快走を見せるも、敢闘賞を逃しフラストレーションを溜め込んでいるバルタは2日連続のエスケープ。今日はようやく敢闘賞を手にすることが出来た。

集団は今日も横風を恐れて激しい位置取り争いに。そのため、逃げは60kmを残し吸収されてしまった。そしてそこで悲劇が起きる。集団先頭付近でボネがジョンにハすり落車。後続は避けるスペースも無く80kmのスピードで次々と巻き込まれた。その中にはカンチェラーラの姿も。さらに少し先でも落車が発生し、総勢50人程の選手が巻き込まれた。しかし、集団は一向にペースを落とさない。本来、マイヨジョーヌを着た選手が遅れた場合、紳士協定により集団はペースを落とすが、スカイ、エティックス、ティンコフを中心にペースアップが起きる。数キロ先でニュートラルがコミッセールから告げられた。選手達は熱くなっており、審判車に詰め寄る場面も見せたが、完全に一つ目の山岳地点のふもとでストップ。およそ10分間にわたってレースは中断された。レース後、主催者は記者会見を開き、今回のレース中断は落者によるものより、救護の車が足りなくなったことが原因と説明した。近年、トップレベルのレースで落車が頻発していることが問題と皆口をそろえているが、トップレベルのレースでこういった形でレースが中断されるのも初めて。今後、同じような展開が起きたとき、物議をかもしそうだ。

レースは山岳ポイントの山頂から開始された。アスタナ、ティンコフの横風攻撃が開始され集団は縦長に伸びていく。落者をした選手にとってかなりきつい展開となった。カンチェラーラも昨日とは打って変わった表情で、なんでもないようなところでも何度も集団から千切れていった。

ユイに入る頃には集団はおよそ40人。総合勢ではピノが脱落。登りにはいって最初からいいペースを刻んでいったのはフルーム。シッティングで力強いペダリングを見せた。一方、他の総合勢は若干下がってしまい、コンタドールはフルームからダンシングでも遅れ、きつい表情を見せた。ラスト500mでアタックしたのは激坂の名手、ホアキン。ギャロパン、フルームは反応したものの追いつくことは無かった。総合勢はフルームが十数秒のリードとボーナスタイムを稼ぐ結果となった。カンチェラーラが消えたマイヨジョーヌ争いは、マルティンにわたったかと思われたが、ボーナスタイムでまたしても1秒差の2位でフルームに渡してしまう結果となった。

カンチェラーラはゴールをしたものの、E3で骨折したところと同じ部分をぶつけて骨折したことにより、石畳を前にツールを去った。

(参考)
・- I started the day with some fear after a bad night following my crash yesterday and some knee pain in the morning, but during the day I really felt good and then better and better. The team supported me also very well. It is a pity we had to lose Dmitriy Kozonchuk. I did not see the crash as I was in front of it, but I could hear it. The speed was really high headed in the direction Mur de Huy. I even had to ask Giampaolo Caruso to slow down a bit. On the Mur everything went well. I attacked with 400 m to go. That is the perfect distance for me. I am explosive and this Mur suits me so well. The last time I wanted to wait a little longer and then I was closed in by others. I did not want to take that risk this time and I went full gas and it was perfect. I am so happy after the fabulous work of the team too, – プリート カチューシャHP

・昨日の落車でひざが痛んでいた。昨晩から恐れていたが走り出したら調子が良く、チームメイトにも助けられユイで勝負できた。落車の音は聞こえたけど前にいたから分からなかった。ラスト400m.でのアタックは完璧だったよ。ユイは僕に向いているね。
“I’ve got my team-mates to thank for the massive effort they put in. They turned themselves inside out to keep me near the front through the trickiest parts of the race. It was treacherous out there – we were up and down, left and right, and obviously there were the crashes as well. My team did a fantastic job and I couldn’t be happier with them.
“It’s never too early to go into yellow, and I’d much rather be in this position than having to make up time on my rivals. We’re going to take it one day at a time now. Tomorrow we’ve got the cobbles so we’ll just have to manage that as well as we can. Something massive has happened every day so far and a lot of time gaps have opened up. I’m not banking on anything at this point and I just hope to get through these next few days with no major issues.”
“I support the decision of the commissaires – that was the decision they took on the road for safety reasons – to get medical attention to the riders. It was a bit confusing out there at first, and my sympathy goes out to all those guys involved in the crashes.” フルーム sky HP

・とにかくコースが複雑で苦労した。コースには満足してないよ。でも、チームメートの働きにとにかく感謝したい。マイヨジョーヌが目標ではなかった。ライバルとの差が欲しかった。今後のステージでトラブルが起きないことを願うよ。コミッセールの判断には賛成だ。最初は混乱したが、落車に巻き込まれた選手を気の毒に思うよ。
“We saw some time differences today. I might have lacked a bit of sugar in the finale but I’ve always said that we will see bigger time differences in the mountains. Froome was very strong. He nearly won the stage today. But there are still many days of racing. You must stay positive. The yellow jersey gives you confidence, you tell yourself you’re well but it also creates pressure and responsibilities. Still I would love to hold it”, コンタドール thinkoff HP
・フルームは強かった。でもいつも言うようにここでの差は山岳のものとは比べられない。まだたくさんある。ポジティブなことを言わなきゃね。マイヨジョーヌは自信になるがプレッシャーともなる。それでも欲しいんだけどね。
“I expected to defend yellow today, not lying on the ground at 80km/h”
“one day you win, one day you lose” カンチェラーラ facebook
2つ目は自転車を象徴するような発言。

・カンチェラーラは落車後、春にE3で骨折した脊椎を落車時に排水溝に強打し骨折。前回よりも激しい痛みが襲ったが、マイヨジョーヌがゴールまで走らしたとコメントしている。
・カンチェラーラは、来年のツールのコース的に今年が最後のマイヨジョーヌのチャンスと考えていた。30日まであと一日。明日のパヴェに強い自信を持っていただけに、他チームからも悲しみの声が届いていた。
・落車の原因は、ジョンの後輪にボネの前輪がハすった。高速での下り、連続するコーナーの中で80km近くスピードが出ていて、後続もよけきることが出来なかった。また直後に落車も起きている。原因はわからないがおそらく落車の音を聞いた選手のブレーキが原因
・この日の優勝候補のサガンは終始コンタドールのサポートに徹した。マイヨブランを取ったが、自身もまだ対象になっていることに驚いていた。
・落車の後、ニュートラルでレースが中断されたことはおそらくツールでは初。
「I will remember this. Every crash we will waiting during the #tourdefrance」
とエティックスのGMがtwitterでコメントしている。
・また多くの選手から「カンチェラーラだから待つのか?」といった声も上がった。
・レース後、プリュドムは落車が原因ではなく、一度に大量の選手が負傷し救護が間に合わなかったことが原因と述べている。
・しかし、自転車界では落車時には集団のペースを落とすという暗黙のルールがあったが、今回は誰も落とそうとはしなかった。カンチェラーラへのリスペクトの低さか、それとも時代が変わってしまったのか。
・コンタドールがフルームから遅れたことは想定外で、ジロの疲れが取れていないのではないかとの心配の声も。
・通常、フレッシュワロンヌでは2度坂を上るが、今回は1度。それにより残れる選手も増えたかもしれない。

第4ステージ

アルデンヌクラシックの翌日に設定された北の地獄、パリルーべ。昨年、ニーバリがマイヨジョーヌを大きく引き寄せたステージでも有り、またパヴェ初挑戦のフルームがどこまで走れるか、未知数であったため今年も注目された。最大の優勝候補、カンチェラーラを失ったプロトンの中では今年の春のクラシックで圧倒的な力を見せたデゲンゴルフと昨年のステージで勝ったボームが注目された。最後のセクターから10km平坦が続くことからスプリンター勢も残れれば小集団スプリントになることが予想された。

レースは今大会最長ということもあり、逃げはすぐに容認。アスタナが昨年同様逃げに一人送ったことでどのような展開を作るのか注目された。セクター7を過ぎ、バイクチェンジをするチームが続出。通常のセッティングのバイクのほうが通常の道では圧倒的に走りやすい上、一つ目のパヴェは比較的綺麗なものであった。今日はセクター6以降、バイクトラブル以外のバイクチェンジが認められていないため、こぞって早い段階でバイクを乗り換えた。

中間スプリントを過ぎ、総合勢は集団のペースを引き上げる。狭いパヴェ。集団が分断してしまえば、後ろにいる選手は前に戻ることは厳しくなるからだ。パヴェでは空気抵抗のことを考えるより一人でも前の位置で走ることが一番重要。後半のパヴェセクターに入り、最初に動きを見せたのはアスタナ。昨年の走りでニーバリは自信を持っており、さらにボーム、フグルサングの最強アシストがいる。どんどんペースを上げ集団を50人ほどに減らすことに成功したが、総合勢を引き離すまではいかなかった。フルームは初めてのパヴェとは思えない快走。しかし、コンタドール、キンタナは少しずつ後方に下がっていった。セクター2でマシントラブルが発生。マルティン、ピノーも含まれた。ここでの判断が後々大きな差を生む。マルティンはパヴェを抜けてチームメイトのトレンティンのバイクを借りすぐに再スタート。一方、ピノーはチームカーを待ったがなかなか現れず、またしても大きくタイムを失う結果となった。

最後のセクターに入り、相変わらずアスタナのフグルサング、ニーバリの波状攻撃。さらにフルーム、トーマス、デゲンゴルフも協調し、パヴェを抜ける頃には10人ほどに絞られた。しかし、その後、フルームに協調してゴールを目指す選手が現れない。一方、取り残されたティンコフ勢は、サガンの献身的なアシストにより先頭に復帰が出来た。おそらく、サガンがいなければコンタドールだけで無く後ろに取り残されたメンバーは復帰できなかっただろう。マルティンも合流する。

ラスト3km。皆が集団スプリントに備える中、トレンティンのバイクに乗ったマルティンがマイヨジョーヌを賭けアタック。集団は誰も反応せず見る見る差は広がっていった。ジャイアントが集団を引きペースアップをしたのはラスト2km。しかし既に遅かった。3日間総合2位に甘んじていたマルティンが念願の初のマイヨジョーヌ獲得。ゴールラインでは喜びを爆発させた。メイン集団はデゲンゴルフが制している。

今回のマルティンの勝因は、エティックスのチーム力。最終局面に人数を残し、スプリントでも、トレンティンのロングスパートでも勝てる展開を作った。チームでマイヨジョーヌにプライオリティーを与えたが、マルティン以外の展開になってもおそらく勝利を挙げることが出来ただろう。クラシックを得意とする職人軍団、エティックス。カヴェンデッシュの喜びの表情から分かるようにチームにとって大きな一勝となった。マルティンはチームTTが終わるまで、マイヨジョーヌを守れるだろう。

(参考)
“Maybe everyone saw when I had a flat tyre in the last cobbled section. I had to change to Matteo’s bike. Maybe they thought I was more on the limit than what I actually was”
“ I knew this finale really well. I was here before for training for two days. I did 180 kilometers of the stage, I knew every little detail.”
“I am also proud to wear this yellow jersey for Germany.” マルティン etixx HP

みんな僕がパヴェでパンクしてバイクチェンジしたとこを見てたからアタックには驚いたと思うよ。トレンティンのバイクに乗ってたからね。このコースは良く下見してあって特に最後は完璧に把握していた。ドイツのためにマイヨジョーヌが着れて嬉しいよ。
・ドイツでは昨年までしばらくツールのライブ中継が中断されていたが、今年から、キッテル、マルティン、グライペルの人気のお陰で放送が再開された。
“it is very difficult to compete for the green jersey while also protecting alberto. I am happy how we handled it all today” サガン facebook
新人賞、スプリント賞を目指しながらコンタドールを守るのはとても難しい。でも今日はよくやったよ。
 I had Geraint ahead of me so we thought ‘why not?’, and I had a little attack. My legs felt good but unfortunately it all came back together.
I know we’ll all be sleeping a lot better tonight.” フルーム sky HP
最後のセクションでトーマスがいて調子も良かったからアタックしてみた。付いて来られちゃったけどね。今夜はみんな良く眠れるよ。
Peter Sagan, who did some excellent work for me.
The objective today was to pass the day without problems and the only problem I had during the race was with my rear wheel in the last 25 kilometers. As we entered the last three kilometers I thought about the possibility of changing my bike but I decided to continue and fortunately I could. コンタドール tinkoff HP
サガンに感謝。今日の目標はトラブル無くゴールすることだった。ラスト25kmで後輪にトラブルを感じたが、ラスト3kmでゴールまで持つと考えたんだ。
 ・各チーム、機材は特殊なものを利用。衝撃吸収性の高いバイク、二重、三重にまかれたバーテープ、タイヤ幅の広いホイール、空気圧を下げたタイヤ、アルミのボトルゲージ
・今日のレースでは第6セクター以降のバイクトラブル以外でのバイクチェンジは認められない。
・多数のエース級選手はパヴェに入るまで足を残すためノーマルバイクが支給されたが、アシスト選手は序盤からパヴェ使用のバイクで出走しているので普段以上に厳しいレースに
・空気圧は通常8-10に対し今日は5-6。
・タイヤ幅は通常23-25だが25-28、中には30までクリアランスが許す限り
・パヴェ区間に入ると、チームカーは前に上がっていくことが出来ないため、各チームたくさんのスタッフがホイールを持ってスタンバイ
・区間出口に大量のスタッフがいるのは、パヴェの振動でボトルが落ちてしまいやすいため
・マルティンはトレンティンのバイクを借りてリスタート。車を待つよりもバイクチェンジを選んだ。身長はマルティンのほうが高いが、サドル高はトレンティンのほうが2cm高い。さらにイタリア人のバイクは右前ブレーキが使われているため、非常に走りにくいバイクセッティング。
・レース後、twitterでトレンティンは「マルティンが明日からおれのバイクで走りたいって言わないことを願うよ」と粋なコメントで祝福
・一方、タイムを失ったピノーは、チームメイトのバイク交換を拒み、車を待っていたため大きなタイムロスとなった。
・今大会最長ステージとなったが、近年最長ステージの距離が短縮される傾向にある。